昔からの変わらないこだわり
兵庫県養父市にある、マルナカ醤油の中野醸造さんに取材と撮影で伺わせていただきました。
中野さんのところに訪れるのは、今回が2回目。
但馬で人気の卵かけご飯のお店「但熊(たんくま)」さんで使われているお醤油が昔から大好きで、どこのお醤油屋さんで作っているものなのか探し求めていました。そして、一軒づつ調べていって出会ったのが、この中野醸造さんでした。
中野醸造さんは、明治32年創業のご家族で経営されている小さなお醤油屋さんで、すぐにこのお醤油をチコニア商店でも取り扱わせて欲しいとお電話して、初めて伺ったのは今から一年ほど前のこと。見ず知らずのぼくのことを快く迎え入れてくださったときのことは、今でも鮮明に覚えています。
今回の訪問で、中野さんにいろいろなことを伺っていると、他にはない珍しい特徴に気がつきました。
それは、今でも瓶の容器を使ってお醤油を販売されているということ。お醤油屋さんの多くがペットタイプの容器に切り替えていく中、容器特有のニオイが苦手というお客さまのために、今でも瓶に入れた商品を残されています。
お醤油は、容器一つ変わるだけでも微妙な違いが出てしまいます。味というのは舌がそれを覚えていて、慣れ親しんだものは敏感にそれを感じ取ってしまいます。全く同じ工程、全く同じ配合で作ったとしても必ず同じ味になるというものではありません。
昔から愛されてきた味を守る、同じ味を長年作り続けるというのは並大抵のことではなく、作る工程、温度や湿度などの環境、材料などさまざまな要素をその都度うまく調整しなければなりません。容器もその一つのこだわりなんだと思います。
そういった日々の努力とこだわりがあるからこそ、いつでもいつまでも同じ味を我々は美味しくいただけるのだと、改めて感じました。
また、お醤油の配達をご自身でされているということも驚きです。ペット容器よりも瓶の方が値段は安いそうですが、当然ペットよりも重く配達は重労働です。
つくり手が見える形で消費者のもとへ商品を届ける。お客さんを増やすことも大事ですが、まずは既存のお客さんを大事にされた、とても丁寧で想いのこもった仕事を見させていただきました。