但馬の暮らしを綴る、弁当と傘
チコニア商店は、ある1冊のリトルプレスの影響を大きく受けています。
たじまの暮らしの小さい本「弁当と傘」。
山陰から北陸の日本海側には「弁当忘れても傘忘れるな」という、ことわざがあります。それをヒントに名付けられた冊子を読んで、チコニア商店は始まったと言っても過言ではありません。
この冊子と出会ったのは、今から4年ほど前だったと思います。
まだSNSもそこまで普及していなかった頃、東京に住んでいて但馬の情報はほとんど手に入らない中、こうやって但馬のことを発信している人たちがいたことがとても驚きでした。
もともと地元に対して良い印象もなければ、帰りたいともほとんど思っていませんでした。自然以外のことに魅力を全く感じていなかったし、魅力はないと思っていました。だけど、この冊子を読んで今だからこそ分かる魅力や、身近すぎて気づかなかったことに初めて気づかされました。
但馬で作られている制作物のほとんどは、但馬に住んでいる人に向けて発信をしているものばかり。フリーペーパーやガイドブックなど、たくさんのものが日々作られていますが、それは今も変わっていないように思います。
それに対して「弁当と傘」はこの当時から、しっかりと外に向けて発信をしていて、明らかにこれまでにはない視点で作られていました。首都圏のお店でこの冊子が置いてあっても、違和感を感じないのはこういった視点で作られていることが大きいように感じます。
編集部は、この地域に住む4人の女性。
組織に縛られることなく、みなさん個人で関わることで自由な発想と作りたいと思うものだけをこだわって作られていて、その雰囲気や空気感は読んでいるこちらにも伝わってきます。自分たちがほんとうに良いものを押し付けるのではなく、そっと伝えてくれる。それが読んでいて心地よい気がします。
弁当と傘の説明文の一文に、こんな言葉があります。
「当たり前すぎて良いところみえなくなっている。だから見つけてほしいこと。そんなことを集めて、冊子にしました。」
長くその地域に住んでいると、地域の良さや外から見た魅力に気づきにくくなっていきますが、但馬という地域としっかりと向き合っている冊子です。弁当と傘は、現在4号まで発売中です。但馬と改めて向き合ってみたい、そんな方はぜひ読んでみてください。