壊さず、残す、活かす

全国で少子化に伴い、廃校になる小学校、中学校、高等学校などがどんどん増えています。但馬にもそうした建物がいくつもあるのですが、そのまま放置されてしまったり壊してしまうのではなく、有効に活用されている場所がいくつかあります。

その一つが、兵庫県養父市大屋町にある、山の分校だった場所を2012年4月に生まれ変わらせた「おおやアート村 ビッグ・ラボ(BIG LABO)」。

改装後は、体育館をさまざまな作品やイベントが行える「展示場」に、校舎の方を木彫り・木工・書・絵画・陶芸・染織などのものづくり体験ができる「創作棟」とアーティストが入居して創作活動に打ち込める「アトリエ棟」となりました。

この場所は、兵庫県立八鹿高等学校大屋校と呼ばれる、兵庫県養父市(旧・養父郡)大屋町に所在した公立の高等学校でした。生徒数の減少によって、2010年3月31日をもって閉校となりました。校舎の中には何十年にもわたる卒業生たちの集合写真が今でも飾られており、年々生徒の数が減っていっていることが写真から見て分かります。

この学校を私が初めて訪れたのはつい最近になってから。廃校になって随分と経ってからです。不思議なもので、自分の母校ではないけど、学校という場所に来るとなんだか懐かしい気持ちになります。

但馬で廃校になった高校はこれまでに7校。そのうちの1つがここです。

この他にも、小学校をお醤油の工場に、中学校を地元企業のオフィスとして活用されるなど、広大な敷地としっかりとした建物の特徴を有効に活用されるケースが増えてきています。

空き家や古く使われなくなった建物を壊すことは簡単です。ですが、一度壊したものを元に戻すことはできないし、長年使われてきた壁や柱の味や当時の雰囲気を新しく作ることはできません。

耐久性の問題や使い勝手の悪さなど、新しい方が良いことももちろんあると思います。でも、やっぱり自分が学んだ学校がなくなるということは寂しいです。昔の建物が持つ良さを活かすことや、当時そこで過ごした人たちの想い出を残しておくということは、それ以上に価値があることのように感じます。

これまで廃校を再活用した場所には、いくつか訪れたことがあるのですが、大きく改修をしてガラッと変えるのではなくそのままの状態で使っているところばかりでした。きっと卒業生たちがいつか訪れてくれた時に、懐かしんでもらえるように、そんな想いがこめられているのかもしれません。

チコニアは、兵庫県北部 但馬地方のふるさとの味を届けるプロジェクトです。